'99年7/24 ・
25 左:八ヶ岳ホースショーにて、緊張の中、出番を待つ。
右:優勝後、リボンを受け取るロディとI
was born to boogie。

第二部 VOL.8(No.8) カウボーイの夢今回より、夢を追うカウボーイ達に触れてみよう。
“列をはみ出した迷い牛ランチ”を、より一層ウエスタンに導いた男達の話だ。ランチのメンバーで、一流大学出のインテリカウボーイ(ブリティッシュで乗っていた男)が、ある日曜日の朝、他のメンバーを駅まで迎えに行ったときのことである。 駅で待っていると、メンバーより先にウエスタンスタイルの二人連れが、駅舎から出てきたそうだ。インテリも、それなりの恰好をしていたので、声をかけられたという。
「“列をはみ出した迷い牛ランチ”に行きたいのですが、知っていますか?」
「ああ、それなら"うち"ですが、乗っていきますか? 丁度メンバーを迎えに来たところなのですから」
こんな会話だったそうです。インテリが、駅を出る前に電話をしてきた。
「ロディ、凄いのがやってきたぞ。これから乗せて行くから、格好つけて待ち受けてくれ」
待ち受けてくれと言われても、襲撃してくる訳ではないのだから、どんな格好すりゃいいんだヨ・・・。
とりあえず、保安官バッジを胸に付け、ガンベルトにリボルバーを差し込み、壁に背を向け椅子に腰を下ろして、ライフル銃を手元に置く、こんなもんだろうと自分で納得。これじゃどっちが襲撃するのかわからないよ。
プップーとクラクションが鳴る、到着の合図だ。スイングドア越しに見ると丁度踏切を渡るところだ。なるほど、後ろの座席にウエスタンスタイルの二人が乗っている、俺は元に戻り彼らを待つ。車から降りた二人は、すぐには部屋の中には入らずに、あたりを見回している、俺は椅子から立ち上がり窓から彼ら(敵)の様子を伺っていた。
一人は細身の長身で、赤のウエスタンシャツに茶のベスト、もう一人はブルーのウエスタンシャツ、二人ともサドルバックを肩に掛けている。「う〜ん、格好がいい。都会のカウボーイか、実に似合う」
と感心しているところへ、インテリが駆け込んで来た。
「ロディ、どうしよう、どう迎える」
「うろたえるでない」
と言った俺がうろたえていた。
「インテリ、早くボスを起こして来い」
その時ボスは、髪の毛が肩まで伸びて口髭も生やしていた。二人には異様な感じに映った様だったらしい、スイングドアが開かれ、劇的な出会いの一歩が踏み入れられたのである。
ボスを交えて、お互いに自己紹介したあと、コーヒーを飲みながら雑談となる。
赤のウエスタンシャツは、飲み屋をやっていて、ブルーのウエスタンシャツは、医者関係だという。甲府の乗馬クラブで遊んでいたが、小淵沢で手作りの乗馬クラブがあるとを知って、偵察に来たのだそうだ。「あッそうだ、この間、週刊誌を見ていたら写真が載っていた、あれは貴方達ですか」
ウエスタン界に集まる人達は、西部劇、鉄砲、カントリー&ウエスタン(C&W)、乗馬、ファッション等に分類される。俺は西部劇と鉄砲からであるが、この二人は、C&Wが好きでウエスタンを始めたのだという。
C&Wの人達の印象は、ギンギンの派手な衣装を着ているという先入観があったから、あまり二人の衣装が地味だったので、話を聞くまではその世界とはわからなかったのである。それが、かえって私に親近感を覚えさせたのかも。
心が通じ合うまでには、そんなに時間は必要ではなかった。二度、三度と顔を合わせているうちに、十年来の友人みたいな関係に到ったのだ。二人の率いるグループがあって、二人はリーダー的な存在。ユニオンスーツという、つなぎの下着は、このグループが(日本に)持ち込んだし、ハットの見分け方も教えてくれたのです。
このグループと会うのが楽しみでねェ。日曜日の朝、新宿発・急行アルプス1号は、いつの間にか都会のカウボーイ達の指定列車になっていたし、帰りは、各駅停車でワイワイガヤガヤ語りながら帰ってきたもんさ。新宿行、5時16分、ゴウイチロクが合い言葉になっていてね。グループの何人か“列をはみ出した迷い牛ランチ”のメンバーに加わって2、3年の、あれは確か11月末のこと、紅葉も終わり、山は冬支度が始まった頃、ボス、私、赤シャツ、青シャツの四人で、一泊二日の馬の旅を計画、初体験に望んだ。まさしく西部劇だった。
自分のことは全責任を持つことを前提として、馬装完了。チャップス、拍車、グローブを身につけ、準備OK、奥さんや仲間達の見送りを受け、旅立った。
外乗コースを抜け、一度アスファルトの道に出た。行き交う車がスピードを緩めたり止まったりして、我々の姿に笑みを送ってくれる、我々も手を振って応える。もう、うれしくて顔が緩みっぱなし。
途中、ボスがサドルバッグから何やら取り出している? ウイスキーのボトルだ。「あれェ、飲めない奴が、何でボトルを持っているんだ?」
飲んべェの赤シャツが近づき、ボトルを横取りして一気に飲もうとしたら、突然吐き出したのだ、コーヒーを薄めてウイスキーに見せかけたのだ、一杯食わされた。
それから、面白いというか、間抜けというか、昼食用のおにぎりをアルミホイルに包んで、サドルバックの中に入れて置いたから、馬の振動でアルミホイルが破れ、サドルバッグの中はぐちゃぐちゃ。昼食抜きの道中。
今度は本物を飲もうと、赤シャツがサドルバッグからウイスキーを取り出した。3人でラッパ飲みしながら、アスファルトの道からゴルフ場の脇を抜け、一気に山越え。
立木は伐採してあったので、視界は明るいが足場は悪く、野バラやツタなどが残っていて、各自が大型ナイフで切りながら歩く。
赤シャツの馬が、切り株と切り株の間に後肢が挟まってしまい動こうとしない。「赤シャツよ!さあどうする」
三人で高みの見物だ。赤シャツは何を思ったのか、馬の下にもぐり両手を自分の膝に固定してから、自分の背中を馬の腹に押し当ててグイッとふんばった。
馬はビックリしたと同時に肢が抜けたのだ。蹄鉄、外傷がないかを調べてから山越えし、林道に出た。ホッとしたのも束の間、今度は青シャツが片方の拍車が無いのに気付き、
「先程の場所らしい、戻って探してくる」
来た道を引き返した。とても大切にしていたものだそうだ。
我々は先に進んで、適当な場所で待つこと小一時間、山あいにこだまを響かせながら、軽快な蹄の音が聞こえてくる。「あの分だと見つかったな」
気づかなかったのだが、随分上へ登って休んでいたんだ。眼下に青シャツの走ってくる姿が見えるではないか、これが茶褐色の岩山であるならば、とりわけアリゾナの高原(行ったことはないが)を連想するが、どう考えても林道を走る姿は、鞍馬天狗が杉作少年を乗せている場面を思い出す。
青シャツの顔は、大切なものが見つかったので安堵感が漂っていた。さあ目的地まであと一山だ。
あの山越えれば後は下り坂、馬も疲れたろうと思い、四人共、下馬して歩きながら頂上へと向かった。(しかしこれは、愛馬精神からではなくて、お尻が痛くて乗ってられないから)
下っていくと、水の流れる音が聞こえてきたのである。「沢だ、沢が近くにあるぞ」
さらに下って、流れが見える沢沿いを歩きながら、キャンプ地を探す。放牧する訳にはいかないので、木々が閑散とした場所を選ばなくてはならない。しかも水場に近く、目の届く範囲がいい、好条件ではないが、まあまあの場所が見つかり、此処でキャンプすることにした。
まず馬を楽にしてやること事が先決だ。陽の落ちる前にコラールを作らなければならない。四方の木立にロープを張り馬を放して、水、餌を与えてから我々の食事の仕度にとりかかる。
疲れと空腹で本当は少し休みたかったのだが、ここで休んでいたら西部劇の主人公は演じられない。思い浮かべたのがカーク・ダグラス主演の「星のない男」
旅の途中で知り合った若いガンマンと街に着いた時のこと、着くと若い方が、馬を下りるなり酒場に入ろうとすると、カーク・ダグラスが若僧の襟を掴んで引き倒す。
『喉が渇き、腹も減っているだろうが、俺達を乗せてきた馬はお前以上だ。馬が先、それからお前だ』こんな事を思い出しながら、食事の仕度をしたのである。我々が食事をする頃には、すっかりと陽も暮れ、無数の星が輝きはじめた。
生木の小枝に肉を串刺し、塩、胡椒をふりかけて、パンとチリビーンズ、ウイスキーにコーヒーと、思い思いに口へと運ぶ。
東の空が明るくなってきた、月だ!今夜は月夜だったのか、ウエスタンには、星と月と焚き火がよく似合う、グーンとムードが盛り上がってきた。
焚き火の炎に照らされた男の顔、顔、顔。みんなが主役を演じてる。夢を実現させた嬉しさを隠しきれない笑顔だ。馬の番と焚き火の番をしなければならないので、見張りを順番で決める事にする。
クジ引きだ。小枝を折り長さを別々にして、一番短い順から見張ることにした。うとうとしたかと思ったらもう私の番になってしまった。シーンとしている、パチパチと焚き火の音しか耳に入らぬ。が、突然闇夜にガサガサと何かが歩いてる感じだ。私はナイフを手に持って音のする方向へと歩き出した。
「あッ」第二部 VOL.9(No.2)へつづく