No.3
第3部 繋ぎ場でのハンドリング
繋ぎ場は、馬にとって安心できる安らぎの場でなければなりません。
日本では、大部分がコの字型に仕切られたところに、2本引きで左右に繋がれています。この場合、馬にとっていつも同じ方向からしか人が近寄ってこないので、そこ以外から人が近づくのを嫌ったりする癖を造る原因になりやすいのです。
出来れば仕切をなくして、リードロープ1本で繋ぎ、普段360度どこからでも馬に接して、馬と人が境界なく触れ合えるような環境を目指したいものです。1) 繋ぎ方
馬を繋ぎ場に繋ぐとき、リードロープを引き馬の時に余したぐらいの長さ、つまり、ヒジと手までぐらいの長さを余して繋ぎます。また、簡単に解けるような結び方で繋ぎます。2) 繋ぎ場への誘導
繋ぎ場への誘導は、引き馬の時の要領と同じです。馬がスムースに繋ぎ場へ来なかった場合は、その場で引っ張らずに2ないし3歩バックさせて、抵抗を見せた馬の心を叱り、再び誘導します。決して物理的力で誘導しようとしては、馬の反抗を作ってしまう原因となります。3) 誘導の対処法
繋ぎ場や洗い場にどうしても入ってこない馬は、どのように対処したらいいでしょう。
誘導者は、馬の「心」が拒否しているということを認識しなければなりません。
馬が繋ぎ場へ入ろうとせずどうしても立ち止まってしまう場所があります。軽い拒否の時と違って、この場合はその場で馬を叱ってはいけません。少し離れた場所へ行って、少なくても10ないし20メートル以上離れた場所まで行って、ロープなどで馬の尻を軽く叩いたりしてプレッシャーをかけます。そして再び繋ぎ場へ誘導します。またその場所で立ち止まれば、引き返して馬にプレッシャーをかけます。これを繰り返していくと、誘導を拒否した場所から離れていくときにまた叱られることを予想するようになり、拒否の場所が1歩か2歩繋ぎ場に近くなります。その時かならず愛撫してあげるようにすると、しだいに馬が自ら誘導されるようになります。
馬にとっては、拒否した場所は愛撫される場所で、離れたところは叱られる嫌なところと学習しますから、しだいに繋ぎ場に入ってくるようになる訳です。さらに、このように拒否の強い馬は、一度繋ぎ場には行ったからと行って止めてしまわないで、何度も出たり入ったりして、完全に抵抗しなくなるまで、この時にやっておくことがたいへん大切です。第4部 馬のケアー(手入れ)
馬のケァーをする場合は、馬に警戒心を起こさせないように、なるべく馬にスキンシップしながら行うことが重要です。
馬に距離を置いておよび腰でやろうとすると、かえって馬が警戒し事故のもととなることがあります。自分自身がリラックスしていることも大切な要因です。1) 裏掘り
蹄の裏に挟まっている土や汚物を取り除いて清潔にします。
人は、馬のお尻の方に向かって立ち、前肢は肩から、後肢はお尻から触り初め、徐々に足首の方へ降ろして行きます。すると馬が自ら肢をあげますので、足首の動きを殺すようにして(つなぎの部分を曲げた状態)持ち、蹄の裏を掘ります。この時、人の姿勢が前屈みになりやすいので、なるべく上体を起こして行うことがよいでしょう。前屈みになっていると、アンバランスになりやすいのと、ハエなどを追おうとする馬の肢に蹴られる危険性があるためです。
馬に肢を上げさせるには、基本として、手を上の方から降ろしていき球節の少し上の部分の後ろ側を指で軽くつまむようにすると、馬が自分から肢をあげます。これでもなかなか肢をあげない場合は、馬を少し反対側へプッシュして、馬に重心移動をさせて肢をあげさせるようにします。この時馬が肢をあげたら愛撫することも忘れないようにしましょう。また、馬がかってに肢を降ろそうとしたときは、絶対に降ろさせないようにすることも大切です。2) ブラッシング
ブラッシングは、馬を清潔に毛艶を良くするために、騎乗前に必ずします。この場合も、馬の肩から、または上の方から下にという順序で行いましょう。
メイン(たてがみ)やテイル(尾)なども、馬を美しく保つために、騎乗前に必ずブラッシングしておくことが良いでしょう。
特にテールを手入れするときは、馬の体に接触させて行った方が馬が安心します。また、1ないし2週間に1度の割合で、シャンプー、リンスをするとなお良いでしょう。3) 耳の手入れ
耳の中は、たいへん手入れのし難いところですが、普段から良く触って馬を馴らしておくと良いでしょう。 また、耳の中の毛をクリッピング(バリカンで毛を刈る)して、清潔にすると良いでしょう。第5部 タックアップ(TACK UP)馬装
タックアップは、馬にとって緊張の伴う作業なので、特にその手順に注意して行わなければなりません。手順を違えると、ハミを嫌ったりするような悪い癖を作る原因になりかねません。
1) サドルアップ(装鞍)
サドルは、馬の大切な、き甲と腹帯の位置に注意してつけましょう。腹帯の位置が後ろ過ぎると馬が嫌がったりしがちですので注意しましょう。 この段階では、腹帯をきつく締めることは避けて、軽くサドルがずれ落ちたりしない程度にしておきましょう。
この時に使い慣れた道具であっても、安全点検を必ずしましょう。特に皮紐や止め金具などの消耗品に注意します。2) プロテクター(ブーツ・バンテージ)肢巻き
プロテクターは、馬自身のつけている蹄鉄から肢を守るためや、グランドから受けるダメージを防護するために使います。 激しい運動に耐えられるように装着することが大切です。
・スプリントブーツ-----前肢用で、馬の球節及びスプリントボーンを保護する。
・ベルブーツ---------前肢の蹄球を主に保護する。また、他の肢を傷つけないようにする。
・スキットブーツ-------後肢の球節をグランドから保護し、また他の肢を傷つけないようにする。3) ビット(ハミ)の装着
カーブビット(大勒)は、馬の口角に1本ないし2本のシワが入る程度のきつさにして装着します。その時のチンストラップは、指2本入る程度のゆるみにします。
スナッフルビット(水勒)は、基本は口角にピッタリと装着することですが、調教が浅い馬は、ゆるめにつけて馬の方からハミを求めてくるようにして使う調教師もいます。
装着の仕方は、ホルターのときと同様に、馬の項へ右腕を乗せるようにして右手でブライドル(頭絡)を持ち、左手の親指を馬の口角から口の中へ差し込みます。すると馬が口を開けますので、右手で頭絡を引き上げるようにして、ハミをくわかせてブライダルに耳を通します。
馬が頭を下げて、自らハミをくわえに来るように普段からしておきましょう。4)注意事項
サドルもハミも、馬が嫌がったりしたときは、馬から体を離さずに何度も繰り返して、喜んでつけさせるまで繰り返し訓練しておきましょう。この時、ブライドルをゆるめに調節して行うと良いでしょう。
また、ブライドルを装着する前に、サドルの腹帯をきつく締めるとハミを嫌がるような悪い癖をつけてしまうことがあるので、腹帯をきつくする前のリラックスした状態にしてブライドルをつけるように心がけましょう。5)手 順
サドルアップ---ブーツの装着---ブライドルの装着---サドルの腹帯の締め直し
手順というのは、扱う人間が馬の緊張の高まりに注意して、馬にとってこれから始まる「仕事」を気分良く始めさせてあげようという気づかいなのです。
![]()
Eldorado Ranchへのメール reining@eldorado-ranch.com
TEL 043-445-1007 FAX 043-445-2115