Horseman's Column title

    VOL.87「乗馬における思考のシステム」

 2017年7月号

 今月は、乗馬における思考のシステムについて考察することにしたい。

 左右のレインの長さを均等に保つ、左右の鐙のどちらかに偏らずセンターにシーティング、ビットや脚のプレッシャーをかけたままにしない、下を見ずに進行方向を見るなど、乗馬において必要な提言がある。

 これらの提言について多くの人は、左右のレインの長さを時折チェックしたり、左右に偏っていないかを気にしたり、レインをホールドしたままになっていないか、脚で馬のお腹を抱えたままになっていないかを気をしたり、また自分がつい下を見てしまっていないかなどを注意して、その時々に修正して、やがてこれらのことが正しく行われるようにしたいと考えるようだ。

 大多数の人は、問題に対して気を付けるようにして修正しようと考えるのである。このような方法では、長い時間が経過することによって効果が現れて修正できるようになれるかも知れないが、とても効率が悪いのである。
 多くの人はこの問題を解決できないのである。

 任意性と必然性ということがあるが、この対処法は任意性を以て改善する方法なのである。

 ものごとの対処方法には、任意的と必然性とがあって、必然性は自動的なので、コンスタントにできる反面制御が難しい、一方任意性は、制御が容易になる反面、思いつかないと実効性がないので、一貫性を保つことが難しいのである。

 私の場合は、初動作を任意性で対応し、その後は必然性を以て対処したいと考えている。必然性で対処する場合注意しなければならないことは、どんな必然性で実行されているのかを認識下におくことだ。どんな必然性が機能しているかを認識しておかないと、必然性をコントロールすることができず、必然性にコントロールされてしまうからである。

 上記のケースで考えてみると、左右のレインの長さを均等にしたり、左右の鐙にかかる体重を均等にしたり、レインや脚でのプレッシャーをかけたままにしなかったりすることを、必然性を以て対処したいと考えるのである。重ねていえば、これらを一々に注意して対処しようとすれば、任意性を以て対処することなので、何かに気をとらわれたり気付かなかったりすれば、対処できないことになってしまうので、良く注意しますという言葉を耳にするが対処できていない人が多いのである。



 そこで私は、レインコンタクトしているとき、何らかの意図もってコンタクトしているので、その意図が達せられているかどうかを、馬の口とビットとの接触点での感触で確認するようにするのである。
 レインコンタクトは任意性のものだが、その意図が達せられているかどうかを、視覚ではなくビットの接触点で確認するようにすれば、左右が均等になっているか、必要なコンタクトができているかは自動的に感知するので、レインを左右均等にしようとしたりプレッシャーをかけたままになっていたりしているかどうかを気にかけなくても、必然的に対処できるようになる。


 左右の鐙に均等に体重を掛ける場合も、片方の鐙にかかっている体重を感知すれば、もう一方がどうなっているかを自動的に感知するので、左右均等に負重することができる。

 馬上で下ばかりを見ずに進行方向を見るようにする場合でも、進行方向を見ようとするのではなくて、自分が今どこを見ているかを認識するようにして、何処を見ているかを認識すれば、見るべき方向や場所を見るようにすることは容易なのである。



 以上のように問題を解決する場合、その問題に直接注意するようにして改善しようとすることが一番愚作だと気付いて欲しい。ライダーは馬に対して何らかのコンタクトするわけで、そのときに感知する接触感を認識すれば、必然的にその問題について情報を感知できるようなり、必然的に問題を解決してしまえるのである。

 しかし、問題に直接注意心を向ける方法は、注意心を向けることが任意なので、注意心を向けなければ一向にその問題を改善できないことになるのである。

 任意性を最小限にして、多くを必然性によって機能するように、絶えず工夫することが必要なのである。

 任意性に頼ることが多いと、そのことに気が囚われて本来傾注しなければならないことが疎かになったり、念頭におくことが多すぎで疲れたり、結局限界があって幾つものこと念頭におくことができないことになる。

 絶えず頭脳はフリーな状態に保ちリラックスしていないと、絶え間なく飛び込んでくる情報に対処しきれなくなってしまうのである。

 任意性を必要最小限にして、大部分を必然性で機能するように工夫すれば、記憶したり念頭においたりすることを最小限にすることができるので、脳が休んでいる状態を保ち、リラックスできたり全体を俯瞰できたり、何よりも余裕が生まれるので、状況の変化に対処しやすくなるのである。

 一鞍をルーティングワークとしてプログラムするとき、ウォームアップとプリパレーションを、馬の得意なパーツや方向から徐々に苦手なパーツや方向に進むようにと大局的方針を決めておき、更に前肢や後肢それぞれ個別に前後左右の動き、そして前後肢をコンビネーションして前後左右の動きを、どのような必然的要因を組み入れて行うかを決める。

 左から始めれば次は右、左右横の動きをやれば次に前後、前後肢のコンビネーションは、最初は前後肢共逆方向へ動き、次に同方向へ動くというように設計して、任意性を以て最初に始めて、次はこっちをやったらあっち、あっちをやったらこっちというように必然的に切り替えるように、プログラミングしておけば、脳はリラックスした状態でできるので、レインや脚でのコンタクトによって感知する馬の状態に的確に対応することができるので、効果がとても容易に生まれるのである。

2017年6月27日
著者 土岐田 勘次郎

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