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    VOL.48「乗馬における馬のビジネス(役割)」



                                                 

 2014年4月号


 今月のテーマは、乗馬において馬が運動中に、実際に行っていることは何かということである。

 つまり、馬はどのようにして動いているかということだ。

 放牧場でリラックスして歩いているとき、馬は、最初の2〜3歩を過ぎて継続して常歩する場合、殆ど4肢の筋肉運動をしていないそうだ。

 このとき、馬の頭は、右後ろに上がり右前に下がり、左後ろに上がり左前の下がるのを繰り返している。この逆でも同様だ。

 馬の頭を上下に動かしながら歩く姿を目にするが、実際に8の字を書くように動いているのだそうだ。
 そして、この頭の動きが止まると、馬は停止する。

 この頭の動きは、何を意味しているのだろうか。

 馬の頭の動きは、重心移動を行っているのである。

 人が走るときに腕を振っているのと同じで、振り子のように腕や頭を動かして重心の移動を促しているのだ。
 馬体重を支えている肢よりも前に重心を移動させ、そして倒れてしまうのを防ぐために肢を動かしてこれを支え、更に頭を動かしてその支えた肢よりも前に重心を動かしているのである。

 つまり馬は、頭を上下動させることによって重心移動を行い、これを支えるためにステップするのを繰り返して運動しているのである。

 従って、人は、ハミをつけることによって馬の頭の上下動をコントロールすれば、馬の運動をコントロールできるのではないかと考えて、馬に乗るようになったといわれているのである。特に運動止めるコントロールだ。

 

 但し、馬の頭の動きをコントロールしても、馬の動きを100%コントロールできるわけではない。
 それは、馬の運動が、全て頭の上下動によってしているわけではないからだ。

 初心者が馬に乗って、一生懸命馬の首をレインで引っ張ってコントロールしようとしても思うようにいかないのは、馬が頭の上下動をしなくても動けるからだ。
 それは、馬が、肢の筋力で馬体重を持ち上げて前に送り出すことによっても重心移動をすることができるからなのである。

 馬の運動には、頭を上下動させて重心移動をする運動と、肢の筋力で重心移動をする運動との二つあって、割合の違いはあってもこの両方を駆使している。
 そして、馬の重心の位置と4肢の位置である支点の位置との、相関関係が重要な要素で、4肢の位置が重心より最大限に遠くなれば、支持力が最大値になり馬は安定して運動しにくくなる。その逆に重心に最大限に近づけば、支持力が最小値になり馬は不安定になり運動しやすくなる。









 重心の真下近くに4肢が近づくことを、収縮というのである。つまり、収縮は、支持力を最小値にして運動しやすくするためにあるということだ。

 馬のバランスは、前進よりにあって、個体差はあるものの前肢に約60%後肢に約40%の体重がかかっているといわれる。
 従って、自然体ではバランスフォーワードなので、重心を支点より前のし易く、頭を上下動させて、4肢の着地点である支点の前に重心を位置させて、運動を継続させることができるから、特に馬の運動に何らかの強制力が働かなければ、必然的にバランスフォーワードのまま運動をする。

 馬が興奮したり反抗したりすると、ライダーがレインを使って頭の上下動をコントロールしても、馬の運動をコントロールできないのは、筋肉運動によって重心移動してしまうからだ。

 

 競走馬と違って乗馬は、発進停止方向転換スピードコントロールなどが絶えず求められる。従って、頭の上下動による運動ではなく馬の筋肉運動をさせ、その筋肉運動をコントロールすることによって、これらのコントロールをするのである。

 この馬の筋肉運動は、バランスフォーワードをバランスバックさせることによって行うことができる。
 このとき、重心の真下近くまで4肢が近づいていれば、使う筋肉力は最小限ですむから、収縮は、馬に筋肉運動をさせる傍ら省エネをさせているということである。

 馬は、バランスバックするために、頭を上げるか、後肢を踏み込むかの二つで、ドレッサージュやチェスの馬は、頭を持ち上げることによってバランスバックしている。
 頭を持ち上げることによって、うなじや背中の靱帯や腱や筋肉が緩み、馬自身とライダーの重量に耐えるために、屈撓させて、緩んだ腱や靱帯や筋力に張力を持たせて、その重量に耐えられるようにしている。

 一方、ウエスタンの馬は、牛の動きに対応するために、素速い発進停止方向変換スピードコントロールなどに対応するために、バランスバックは欠かすことはできず、そのために後肢の踏み込みを最大にして行っている。

 支点と重心との位置関係を、それぞれコントロールして馬は運動しているので、頭の上下動や後肢の踏み込みなどによって、重心の位置をコントロールすることを主体的にしたり、支点の位置をコントロールすることを主体にしたり、その両方をして運動しているのである。










                 2014年 3月15日

                 著者 土岐田 勘次郎


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