Horseman's Column title

    VOL.15 「トゥトラック Two Track 二蹄跡運動」

                                                 

 2011年7月号

 今月は2トラック(Two Track 二蹄跡運動)を、テーマにしたいと思う。

 2トラックとは、二蹄跡運動の事をいう。

 この運動が馬術的にイングリッシュやウエスタンと異なった世界にあっても重要視されるのは、馬のフィジカル的構造によるもので、馬が草食動物が故に、肉食獣から身を守るために、立ったままで休息できるように脊椎を硬直化させたことから始まるのである。

 脊椎を硬直化させることは、背筋を使って立っている態勢を維持すれば、筋肉運動としてその態勢を維持することになり、筋肉運動は疲労し易く立っている態勢を長い時間維持することができない。従って馬は進化の過程で脊椎を硬直化させて、筋肉力を駆使しなくても立っていられるようになったのである。

 ところが脊椎を硬直化させて、立ったままでも疲れないように進化したものの、脊椎が硬直したことによって、運動において効率よく走るために重心を運動ベクトルの線上へフレキシブルに移動することができなくなってしまったのである。

 そこで運動のベクトル線上に、重心を移動するのではなくて、重心のあるポイントを運動ベクトルの線が通過するようにしなくては、運動効率を良くして走ることができない。この為に馬は斜対駈歩を生み出して、この2トラック運動が重要視されるようになったのである。



 身近にいる肉食獣というと犬と猫が思い当たるが、犬猫は脊椎が柔軟で、走るときの運動ベクトル線上へ脊椎を曲げることによって、その線上に重心を移動して、効率よく運動しているのである。しかし、普段速く走る以外は寝転んでいることが多いのは、脊椎が柔軟なので立っているとき、背筋や靱帯などの筋肉力を行使して立っているから疲労し易いので、必要以外は寝転んで休息するのである。

 因みに、自分で直立してみると如何に筋肉運動というものが疲労するものなのかが理解できる。
 垂直に起立する場合、膝を曲げて立っている場合と膝を曲げないで立つのでは、比べものにならないくらい膝を曲げて立つ方が圧倒的に疲れる。

 つまりこの膝を曲げて立つ方が、肉食獣が立っているケースで、膝を曲げずに直立しているのが、馬が立っているケースで、筋肉力を使わずに立っているから疲労度が少なくて、肉食獣に襲われたときに、直ぐに走り出して逃げることができるのである。どんなに頑張っても、膝を曲げずに立っている方には勝てないという訳だ。

 そして、脊椎が硬直してしまった馬は、運動ベクトルが重心を通過するようにすることで、運動効率を上げるように2トラック運動を行うようになったのである。







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