Horseman's Column title

    VOL.109「バランスバック」

 2019年5月号

 今月のテーマは、バランスバックで、フランクの柔軟性により実現できるこということについて考察します。



 バランスバックは、馬術において可成り重要な要素であります。しかし、この言葉自体に誤解を生む要因が含まれていて、この場合バランスとは、センターオブグラビティ(重心)のことで、バランスバックというと重心を後ろに移行するように聞こえてしまいます。しかし、バランスを後ろにすることは、馬の頭を起揚させたり屈撓させたり、ライダーが上体を起こしたりと多少ありますが、実際には重心の近くに後肢を踏み込ませて、結果として重心の位置を後駆よりにすることだと理解しなければなりません。

 つまり、重心を後ろに移行することではなく、重心の近くにこれを支える後肢を移行するということと理解するべきなのです。

 そこで、後肢の踏み込みを深くするための重要な要因が後肢の可動域で、このためにフランク(Flank 脇腹)の柔軟性が重要なのです。

 ストレッチ運動において、フランクの柔軟性を養成するには、先ずライダーのポジショニングが大切で、ライダーが前傾することなく上体を起こして、鐙を強く踏み込むことなく、極力シートに体重を掛けるようにして、馬の左前肢を越えて左後肢を馬体の内側に、右前肢を越えて右後肢を馬体の内側へネックを左右にベンドさせながらステップさせて柔軟性を養成します。

 このストレッチ運動では、ライダーのポジショニングが重要で、このライダーのポジショニングに加えてレインを上方向にピックアップすることをワンセットとして行う必要があります。
 ライダーが上体を起こしてシートに負重し、レインを上方向にピックアップすることで、上方向にピックアップする力と、レインをピックアップすることで生まれるシートの下向きの力とがパラレルとなって、馬体に縦の回転モーメントを作るので、レインをピックアップする力が後肢を前に引きつけるように作用し、後肢の可動域を大きくすることができるようになるのです。


 ライダーによるバランスバックは、せめて上体を起こすぐらいのことで、サドルに座っているいじょうより後ろに座ることには限界があります。しかし、後肢がより前に来ることができれば、結果的に後駆に座ることを可能にするのです。

 馬は、静止状態では前肢に6割、後肢に4割の体重配分だが、馬術的にはこの体重配分を後肢により負重させることによって、方向の転換や回転運動やストップやチェンジリードなどを容易にしているのです。従って、バランスバックは、馬術の一丁目一番地だということができるのです。

 そして、バランスバックは、フランクの柔軟性をもって後肢の深い踏み込みを可能にすることによってできるのです。

 多くのライダーがレインを引くとき、ライダー自身の重心に向かって引きます。
何故なら、ライダー自身の重心にレインを引くことによって、ライダーのバランスが維持されるからなのです。つまり、アンバランスを避ける反射神経の働きによって、意図しない限りライダー自身の重心に向かってレインを引いてしまうのです。
 ところが、ライダー自身の重心にレインを引けば、レインを引く力を後肢の動きに影響させることができないのです。
 しかし、レインを引く力を上方向へ向かうことによって、シートが下へ向かう力とパラレルとなるので、馬体に回転モーメントが生まれ、レインを引く力によって後肢の動きに大きく影響させることができるのです。



 レインを上方向にピックアップすれば、馬体に回転モーメントを生じさせることができ、レインをピックアップすることで後肢を前に引きつけるように作用させるので、バランスバックを作ることができます。同時に、収縮の体勢を容易に作ることができるのです。

2019年4月22日
著者 土岐田 勘次郎

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